日本昔ばなし御伽草子『舌切り雀』菅原りこちゃん初日レポ

舞台『舌切り雀』初日を観劇しました。
りったんを中心にレポを書いていきたいと思います。

7列目のほぼセンターだったので舞台との距離も程良くとても見やすかったです。

太宰治の『舌切り雀』なので良く知る昔ばなしでは無く、夫婦を中心にした愛の物語でした。
人間の身勝手さにやるせない気持ちになる場面もあり、優しさにぐっとくる場面もあり良い舞台でした。

舞台全体を通して映像の使い方が上手く非常に美しい世界が描き出されていました。音楽も良かったです。
要所要所で登場するランプの演出も命の灯火が繋がれていく雰囲気を感じて好きでした。

みやび役の菅原りこさんについて

今回のりったんは雀の子役でした。
全体を通して素晴らしい出来だったと思います。

個人的お気に入り3ポイント

1.役柄と声の相性の良さ。
りったんの少し高めの透き通る声が雀のイメージによく合っていて物語への説得力が増す印象を受けました。

2.表情の多彩な変化。
一郎太への真っ直ぐな愛情がよく伝わってきました。
何より話せなくなってからの表情のみのお芝居が本当に良かったです。台詞が無いのにみやびのジレンマがしっかり伝わってきて涙腺が緩みました。
特に一郎太がお宿にいても良いと言われた瞬間に浮かんだ嬉しそうな笑顔とずっとはいられ無いと知った瞬間の悲しみに満ちた表情の切り替わりが素晴らしかったです。流す涙がキラリと光る様は正に雀の涙でした。

3.歌声の美しさ
今回の舞台ではソロで歌う場面があります。
初日だったので声の伸びに硬さを感じましたが透き通る歌声は耳に心地よく『雀の涙』のフレーズが耳に残って離れません。一郎太が惚れ込むのも納得でした。

ダンスシーンもありこちらも本当に良かったです。
当て書きかと思うほど今までの経験が活かせる役をもらえて良かったなとほっこりしました。

太宰治役の内博貴さんについて

ストーリテラーとして物語を進行する役なのですが、声が本当に良かったです。落ち着いた声音で物語の世界に一気に引き込まれました。
めぐみに謝罪するシーンの優しい声が特に好きでした。
『死んだ女をずっと想って一途に生きていきたい』願望があるくせに本人は絶対それが出来ない真逆の人間性なのが面白いしそこに彼のジレンマみたいなものを感じます。
自分が出来ない理想を物語りの登場人物に押し付ける身勝手さを理解していて罪悪感も持っているのに、そうしか書けないのが太宰治だよなと勝手に思っていました。
私は太宰治のこの身勝手さが好きでもあり嫌いでもあります。

一郎太役の松本幸大さんについて

演技が本当に素晴らしかったです。
苛立ちと苦悩に満ちた演技も見事でしたし、絵がかけたあとの憑き物が落ちたような穏やかな笑顔への変化が本当に素晴らしかったです。
全てが上手くいくと思わせる説得力のある見事な変化ゆえにラストの悲しみが倍増する。見事としか言えない出来でした。

おばあさんとおじいさんを演じた萬田久子さんも片岡鶴太郎さんも安定感のあるお芝居で見応えがありましたし、めぐみ役の吉川友さんも素敵でした。

カーテンコールは萬田さんと鶴太郎さんからご挨拶がありました。鶴太郎さんの『日々進化するので今日全部見たと思わないで下さい』や『毎日通って内くんの日々美しくなる顔を見て下さい』などちゃめっ気溢れるお話に笑わせてもらいました。

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